カメラ業界の現状と未来を数字で分析する
背景
最近、デジタルカメラの売上が落ち込んでいるというニュースを見ます。
それによって、事業の縮小やリストラ(希望退職)も行われており、カメラ業界が衰退しているといわれています。
果たして実際にはどうなのでしょうか?
"【追記あり】リコーがカメラ事業縮小へ、GRやペンタックスブランド消滅か - エキサイトニュース"
本記事の目的
本記事では、「カメラ業界が衰退している」といわれているが、実際問題どんな状況なのか?というのを数字で確認するというのが目的です。
デジタルカメラの分類は、CIPAのレポートと同様に「レンズ一体型」「レンズ交換式一眼レフ」「レンズ交換式ミラーレス」の3種類とします。
カメラ業界の現状
デジタルカメラの出荷台数の推移
1990年から2016年までのデジタルカメラの出荷台数(グローバル)の推移をグラフにまとめました。
また、2000年頃にはデジタル一眼レフ、2010年頃にはミラーレスが登場するなど、カメラ業界は成長を続けてきました。
しかし、2010年を境に急激に右肩下がりとなっています。
2008年には年間1億台以上あった「レンズ一体型」は、2016年には約1000万台にまで減少しました。
これがカメラ業界の現状であり、本記事の冒頭で示したようなニュースにつながっていると考えられます。
果たして、この原因は何なのでしょうか?
スマートフォンの普及による影響
みなさんも想像していたかもしれませんが、スマートフォンの影響が大きいのではないでしょうか。
最近では、ガラケーを見かけることはほとんどなく、電車に乗っていても多くの人がスマートフォンを使っている光景が当たり前となりました。
そこで、スマートフォンの出荷台数を先程のグラフに加えてみました。
初代のiPhoneは2007年に発売されましたが、そこから爆発的に普及していきました。
(グラフが見づらくなるので、3億台を上限としていますが、2017年現在までこのまま線形的に伸び続けています)。
レンズ一体型カメラ
レンズ交換式カメラ(一眼レフ、ミラーレス)
「レンズ交換式」カメラについても、2012頃ピークに徐々に減少していることがわかります。ただし「レンズ一体型」よりは、傾きが緩やかです。
「レンズ交換式」のカメラは、一般的に「レンズ一体型」のものより高画質・高性能であり、レンズの性能によるボケや望遠の効いた写真がとれるという利点があります。
スマートフォンのレンズは一体型であるため、このような点において差別化されて、「レンズ交換式」カメラは大きな影響を受けていないと考えられます。
カメラ業界の今後の見通し
ここまで、カメラ業界にとってマイナスの要素を多く述べてきましたが、プラスの要素もあります。それはユーザーは写真を撮ること自体は好きであるということです。
観光地ではもちろん、日常的にもカフェで写真を撮ったり、子供の写真を撮ったり、ペットの写真を撮ったり、写真を撮ること自体はみんな好きなのです。
その点では、「レンズ一体型」は衰退していき、「レンズ交換式」は今のところ生き残っていると考えられます。
ただし、iPhoneのポートレードモードによるボケなど、ソフトウェアの進化によって「レンズ交換式」の特徴を取り入れようという試みもあり、今後の動向をウォッチしたいと思います。
まとめ
*1:"CIPA 一般社団法人カメラ映像機器工業会: デジタルカメラ統計"
http://www.cipa.jp/stats/dc_j.html
*2:"Global Smartphone Market Forecast - Business Insider"http://www.businessinsider.com/global-smartphone-market-forecast-2016-3